終わりにすると誓え――。1852年、豊臣政権下。世は火種を残しつつも、一時の平和を謳歌していた。そこに彗星のように現われた天下の大泥棒・石川五右衛門(江口洋介)。超人的な身体能力を武器に、金持ちから盗み、貧しき者に分け与える彼を民衆は義賊ともてはやし、熱狂していた。そんなある夜、紀伊国屋邸に盗みに入った五右衛門は南蛮製の箱を手に入れる。ただの空箱だと思った五右衛門はその場で投げ捨ててしまうが、その箱こそ信長暗殺の真相につながる禁断の箱だったのだ。滑り込みセーフで見てきました。なんといっても「CASSHERN」の紀里谷監督作品ですからね。絶対見なくてはと思っていました。
初見の感想としては、メッセージ性が若干「CASSHERN(以下:前作)」より弱かったかなと感じました。前作はテーマがとても分かりづらくて何度も見返したのですが、「GOEMON(以下:本作)」は台詞に監督が訴えかけたいことが前面に出ており、汲み取りやすかったです。が、それが逆に薄っぺらく感じてしまった要因かもしれません。前作は「絵」で、本作は「台詞」と、伝えたいテーマの訴え方が違い、私にとっては前者の方が性に合っていたのかもしれません。しかし、どちらの作品も根底にあるのは同じ。「復讐による悲劇」「利己主義の残酷さ」「地獄の中から見出す希望」といった部分では共通していたかのように思います。
この作品を時代劇と捉えがちですが、実はそうじゃないんだなと感じました。歴史上の実在の人物が多々出てくるわけですが、「安土・桃山時代」を監督独自の視点で幻想的な世界観に仕上げられていました。人物以外はほぼCGで作られたそうですが、日本のような異国のような、今まで見たことのない映像になっています。それが効果的で、観客は無限の想像が出来る。ファンタジーなのに、どこか自分の現実社会と繋がりがある気がしてくる。
貧しい民衆。不安定な世情。いつ足元をすくわれるか分からない毎日。まさに現代の世の中を投影しているかのようです。
だからこそ、登場人物たちの行動や言葉に、見る者は心を揺さぶられるのかもしれません。
以下、若干ネタバレになるかもしれません。
本作では「友情」も重要なキーワードとなっています。
石田光成に仕える雲隠才蔵との絆です。彼らは最初、激しい戦闘を強いられます。しかし、実はお互い唯一の友達だったのです。

反目しあってはいるものの、結局は助け、助けられる。二人の間には離れていてもずっと友情という糸で繋がっていた。
やがて才蔵は光成によって妻を失う。五右衛門もその現場に駆けつけるが、彼に酷く殴られてしまう。しかし、五右衛門はただじっと彼の激しい負の感情を全身で受け止め続ける。彼が剣を振りかざしたとしても、五右衛門は目を閉じてそれを受け入れようとする。ここが、五右衛門の人柄を如実に表していると感じました。すごい男だ。
そして才蔵も、自ら五右衛門の身代わりになって殺されてしまう。
自分が関わってしまったがために、大切な人を亡くした五右衛門。「復讐はいけないことだ」と主張していた五右衛門だったが、秀吉や光成によって、自分の信念を曲げなければならない宿命を背負うことになる。
復讐からは何も生れない。戦いからは何も生れない。汚い金を盗み、貧しい民衆へ与える。そうやって、自由に生きていきたかった五右衛門。しかし、邪悪な権力によって五右衛門は復讐の道へと飲み込まれてしまったのだ。
かつて自分が仕えていた信長の姪「茶々」は五右衛門に言った。
「行きなさい、五右衛門」

そこで五右衛門は吹っ切れたのかもしれない。ためらう彼の背中を押したのは、茶々のその一言だったのかもしれません。
劇中、南蛮製の箱を「パンドラの箱」になぞらえています。
五右衛門は、「パンドラの箱に一つだけ残った物がある。だから人間は生き延びることが出来た。俺にはそれが欠けていた」と言い残します。そして彼は最後の戦いへ向かいます。ここからは、もうただ胸が熱くなって、ぐっと涙をこらえていました。さすが、監督です。
どんな時代にあっても、「パンドラの箱に残されたたった一つの欠片」は失ってはいけない。これがあったからこそ、未来へ向かう力が生れるのだなと思いました。
その欠片を、五右衛門は徳川家康に託します。このシーンは、劇中で最も美しいシーンでした。
佐助の行動を五右衛門は責めませんでした。なぜなら佐助の行動はその欠片によるものだということが理解できたからでしょう。
鑑賞後にもじっくりと余韻に浸れる、素敵な映画だと思いました。
五右衛門のような男、今の時代だからこそ必要なのかもしれません。世の草食系男子にも、五右衛門のかっこよさが伝わってほしいな。
公式ホームページ

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2009年 日本
監督:紀里谷和明
出演:江口洋介、大沢たかお、広末涼子、ゴリ、中村橋之助、寺島進、平幹二朗、伊武雅刀、奥田瑛二、要潤、玉山鉄二、チェ・ホンマン他
自己満足的評価 ★★★☆☆